Bluetoothで測位が出来る仕組みとは?4つの屋内測位の技術を解説 -1.Bluetooth編-
測位システム(Positioning system)の分野の中で最も有名なのはGPS等の衛星を使った測位システムですね。皆さんも日常的に利用されているかと思います。
こちらの衛星を使った測位技術については、「GPSとみちびきの違いとは?衛星測位の種類やGNSSの原理も紹介」にて詳しく解説していますのでそちらを御覧ください。
この記事では屋内測位に焦点をあて、屋内測位の方法や技術的な解説、ユースケースをお話したいと思います。
目次
衛星を使った技術とはまた別の屋内測位システムの技術とは
屋内測位システム、これは英語でIndoor positioning systemと呼ばれ、測位システム分野の1つの技術体系です。
なぜ、衛星を使った技術とは別に屋内測位システムの技術が存在するか。それは衛星測位の技術のみでは、高層ビルや空港、路地、駐車ガレージ、地下の場所など、様々な場所や利用シーンに置いて精度が落ちるか、測位に完全に失敗するためです。
一般的な衛星測位は最低4つの衛星から信号を受信する必要があります。複数の衛星から信号を受信し比較することで精度を高めています。逆に受信できる信号が3つ以下になると大きく精度が悪くなってしまいます。
この信号ですが、建設資材、例えば、屋根や壁、その他の物体によって、減衰及び散乱が引き起こされます。その減衰や散乱の結果、受信できる信号は減ってしまい、屋内では衛星を使った測位の精度が悪くなってしまうのです。
とはいえ、年々、受信機側の感度が向上していますので、屋内で精度が悪くなることはあっても完全に測位に失敗するということは少ないかもしれませんね。
話を戻して、このような、衛星測位のみでは精度が不足してしまう場合に屋内測位が用いられ、屋内で位置の特定には無線技術が利用されます。
利用できる無線技術は複数あり、ユースケースや導入規模によって最適な方法が異なります。
以下に、その中でも商用・個人問わず屋内測位に利用されることが多い無線技術を記載しています。
- 1.Bluetooth
- 2.Wi-Fi
- 3.RFID(無線周波数識別)
- 4.UWB(超広帯域)
各技術の簡単な解説とメリットデメリットをシリーズで記事にしたいと思います。
今回はBluetoothを使った屋内測位技術です。
屋内測位で利用されるBluetooth技術の説明
Bluetoothは、近距離で無線用いて短距離にわたってデバイス間でデータを交換するために使用される技術です。Bluetoothの身近な利用例としてスマートフォンと無線オーディオ機器との接続がすぐに思いつくかもしれません。
IoTの分野においては、BluetoothのBLE(Bluetooth Low Energy)という技術を利用します。BLEはその名の通り、従来のBluetoothと同様の通信範囲を維持しながら、消費電力とコストを大幅に削減することを目的としています。
ただし、通信範囲と消費電力はトレードオフの関係にあります。そのため、一般的なBluetoothの通信範囲( ~ 20m)で利用されることは少なく、より通信範囲を限定して利用されます。
また、Bluetoothにはデータの通信方式が2通りあり、BLEの利用用途では、より消費電力の少ないブロードキャスト方式が向いています。
- コネクション方式:特定のデバイス間で相互にデータを送受信が可能
- ブロードキャスト方式:送受信の役割がデバイス毎に決まっており、一定周期でデータを一方的に送信するデバイスと、受信のみを行うデバイスが存在する
Bluetoothによる屋内測位の仕組み
Bluetoothはこれ自体が測位のソリューションというわけではありません。
その近接性に着目し、Bluetoothの送信デバイスを基準点として、放つ電波をマイクロフェンスにみたてフェンスの内外を判定する、マイクロフェンスソリューションとして利用されています。
Bluetoothの送信機または受信機を屋内に複数配置しマッピングを行い、どのBluetoothの電波を受信しているかで現在の位置を把握します。電波の送信間隔と受信間隔を調整することで、リアルタイムで位置を補足したり、長期間に渡ってほったらかしで運用したりすることが可能になります。
リアルタイムに位置を補足するユースケースでは、海外で、美術館や遊園地、エキスポ会場などで経路探索(現在地から会議室、トイレ、駐車場などの目的地に誘導)に利用されています。
Bluetoothによる屋内測位のメリット
衛星測位の技術のみでは精度が低くなる、高層ビルや空港、路地、駐車ガレージ、地下の場所などで利用できます。BLEビーコンを基準点とする場合、ビーコン自体を低コストで用意でき、かつ電池の長寿命が期待できます。
また、基準点をサービス提供者が設定できるため、立体的な建物やロケーションに対応することが出来ます。
Bluetoothによる屋内測位のデメリット
Wi-Fi測位などの既存の機器を利用する方式と異なり、(低価格ではありますが)別途HWを調達する必要があります。
また、BLEビーコンを利用する関係上、1台あたりがカバーする範囲がどうしても狭くなってしまうため、広大な平地を測位する用途には向きません。インターネットを介したサービスとして利用する場合、Bluetoothの受信側がインターネットの接続に対応している必要があります。
まとめ
Bluetoothを使った屋内測位は、サービス提供者が調整できる範囲が広く、様々な業種のDX分野で利用が期待されています。導入コスト、電波の範囲、連続稼働時間のバランスが良く、衛星測位の精度が期待できないロケーションや、より階層情報などの高精度な位置情報を必要とする場合に優秀な選択肢です。
Bluetoothを利用した屋内測位は弊社プロダクトのLinkit エリア探索とLinkit GPS Trackingで利用されています。もし記事から屋内測位について、興味を持って頂けましたら、是非とも資料請求やお問い合わせ頂けたら嬉しいです。
関連サービス
屋内ヒトモノ見える化IoT「Linkit エリア探索」
ビーコンを活用し、従業員やモノの所在をPC・スマートフォンからすぐに確認。探す時間がゼロになります。フリーアドレスのオフィスや、広大な工場、倉庫、建設現場などに有効です。
位置情報資産管理「Linkit GPS Tracking」
大事な資産がどこにあるのかすぐに確認できます。ジオフェンス機能で指定範囲の出入りを通知できます。車両管理、物流、運送、建設、紛失防止などに役立ちます。
屋内・屋外の位置情報DX常設展「位置情報 DX EXPO EVERYDAY」
屋内・屋外の位置情報DX IoTサービス・システムの常設オンライン展示会。位置情報の様々なセミナー、ソリューション紹介、事例紹介など多彩な無線通信・位置情報技術搭載のIoTデバイスを活用した最先端の情報をお届けします。