衛星測位(GPS・みちびき)の誤差の原因と精度向上の方法を解説
GPSをはじめとするGNSS(衛星位置測位システム)は、現代では様々な目的に欠かせません。
日本でも準天頂衛星「みちびき」が順次打ち上げられるなど、その精度も向上しています。
この記事では、GNSSで発生する典型的な誤差の原因と精度向上の方法について説明します。
目次
検知できる衛星が不足
前回の記事 (GPSとみちびきとGNSS)で記載しましたが、衛星測位において一番重要なのは、衛星を4機以上検知することです。
検知できている衛星が3機以下の場合、平気で100m以上の誤差が発生することになります。
市街地や山岳地での誤差はこのケースが多いでしょう。
衛星軌道情報(エフェメリス)受信とアシストGPS
衛星が受信する情報の中で、衛星軌道(衛星の位置)を含んでいるエフェメリスは非常に重要です。
このエフェメリスは2時間ごとに更新されており、測位開始時には必ず受信が必要です。
エフェメリスの受信には 30秒程度かかるため、受信機の電源OFFからONに切り替えた時には、位置情報取得まで30秒程度かかることになります。
受信機が省電力のためのスリープから復帰する際の測位に時間がかかるのはこのためです。
このエフェメリスを携帯電話の基地局から取得することにより、測位までの時間を短くすることが出来ます。
これをアシストGPSと呼びます。
電離層と対流圏の影響
電離層は地上 100km~1000kmの範囲、対流圏は 地上10km までの範囲を呼びます。
衛星からの信号をこれらの層を通過するときに遅延が発生し、計測に誤差が発生します。
これらの遅延量は受信機内のソフトによる計算処理により軽減することが可能です。
これにより 2~3m 程度範囲まで誤差を軽減することが出来ます。
誤差要因 | 潜在的な誤差の大きさ | 備考 |
---|---|---|
電離層遅延量 | 2~10m | 仰角に依存 |
対流圏遅延量 | 2.3~2.5m | 仰角に依存 |
出展:図解よくわかる衛星測位と位置情報(日刊工業新聞社)
マルチパスによる影響
マルチパス誤差は、電波が建物などの障害物に遮られたり、反射したりして弱まることにより発生します。
市街地や窓際などでは数10m~100m程度の誤差が発生することがあります。
衛星測位では、衛星からの電波を直接受信することが重要となります。
スマホ測位の特徴
現代のスマホには、GPS測位機能は標準機能として搭載されていることがほとんどです。
スマホでの測位には、専用機に比べて以下の特徴があります。
- 時刻や省電力・プライバシーの設定をユーザーが設定できるため、GPS測位の精度が悪くなっている場合がある
- アシストGPSが利用できる
- WiFi測位が利用できる
また、スマホでの測位の場合には、以下の設定をすることで精度が上がる可能性があります。
- 時刻を自動補正にする
- Wi-Fiの設定をONにする
- 位置情報を高精度の設定にする
- アプリの位置情報送信設定を「常に許可」にする
スマホには、アシストGPSやWIFI測位を補助的に利用できる利点がありますが、高頻度の測位では電池消費量が大きいという弱点もあります。
長期間継続的に測位を行う場合や、コスト面が気になる場合には、GPSSLIMのようなGPSトラッカー専用機を使うほうがメリットがあります。
まとめ
まとめると、以下のことに気を付けることで測位精度を高めることが出来ます。
- 衛星を4機以上受信する
- 衛星からの電波を直接受信する
- 受信機の時刻設定を正確に保つ
- (スマホでは)WiFi測位やアシストGPSをONにする
原理的に、衛星測位では市街地や屋内での測位に弱いという特徴があります。
それを補うのがアシストGPSやWiFi測位ということになります。
次回は、さらに高精度の測位を行う技術について説明します。お楽しみに!
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